2026.3.12 (木) – 4.18 (土) UNION PACIFIC, ロンドン
Skipping Stones organised in collaboration with Saki Kanaya
BIEN, Yuri Ando, Kanji Hasegawa, Aya Higuchi, Miho Ichise, RyuTakeda, Chen Tianyi, Koji Yamaguchi
私たちが抱いている内面世界は、日々の体験によって形づくられています。そのなかでもいくつかの儚い瞬間は平凡を飛び越え、注意を惹きつけます。こうした平凡な日々のなかにある小さな遭遇は、漠然と私たちの記憶に刻まれていくのです。日常の多くは足早に通り過ぎていきますが、この小さな瞬間を私たちは拾い上げて小さなポケットに入れて持ち運び、そしていつか水面に投げられるときまで大切にしまっています。そして、この小石は時が来ると水面を跳ねながら前へと進み、新しい経験へと形を変容してい
くのです。「Skipping Stones」は、こうした日常的な視覚体験 -理由や結論、物語性を見出そうとすることなく、情景や現象がそこに在るままに受け止める視線を起点としています。そして、その体験がどのように経験として内面化され、概念化されていくかを考察するものです。本展の作品は、イメージが私たちの眼前にある世界と内面に抱く世界の間をどのように行き来し、これらの遭遇が小さな波紋を残すのかという普遍的な問いに呼応しています。
樋口 亜弥(1988年、東京生まれ)と市瀬 美穂(1969年、埼玉生まれ)の作品には、こうした内面化のプロセスの始まりを見ることができます。彼らの絵画は、人生で最も小さく、そして喜びにあふれた瞬間を静かに表現しています。陶器の皿に載ったひと切れのケーキや、雨上がりの土の香り。市瀬の《Moonlit Town》に見られるように、静かな夜の平穏が月明かりとともに映し出されています。山口 幸士(1982年、神奈川県生まれ)の作品は、誰もが親しみを感じられるような光景を、記憶のように柔らかくぼかしながらも、繊細で動的な感覚を通じて、鮮やかな感覚的存在感を保っています。
安藤 由莉(1998年、神奈川生まれ)は、馴染みのある風景をより抽象化された記憶の領域へと引き上げています。心のポケットから日常の情景を取り出し、それを画面に翻訳していくのです。《apartment complex leaves》では作家がかつて住んでいた東京都内の住宅団地にインスピレーションを得ています。この団地は都市計画の一環として取り壊されており、現在は存在しないものの、この景色が与えた印象は今もなお安藤の内面世界に残っています。絵画の空間は「実際にある風景や記号的な形に反応し」、この物理的な翻訳のプロセスを通じて、「実際の風景が次第に絵画空間へと溶け込んでいく」のです。記憶のひとかけらが画面の上を飛び、変容した体験の微かな波紋を落とします。
長谷川 寛示(1990年、日本生まれ)は、自然物と工業製品、花と金属という日常的なモチーフを用いて、物と時間の間に言葉のない対話を生み出しています。長谷川は彫刻と禅の枠組みを起点に、流れ過ぎ、内面化された時間の蓄積を浮かび上がらせています。ここでより明確に外的な世界から内的なイメージへの移行が始まり、見るという行為が理解の手段となっていきます。陳 天逸(1996年、中国・南京生まれ)は、この言葉を持たないコミュニケーションをノスタルジックで幻想的な領域へと拡張し、多層的な平面表現を通じて、夢と記憶、現実の交差点を探求しています。幻想と実在の境界が揺らぐこの感覚は、BIEN(1993年、広島生まれ)と武田龍(1989年、茨城
県生まれ)による、抽象化された物的存在感を通じてさら
に深く探求されています。
展覧会を通じて、穏やかな観察が次第にぼやけ、断片化し、内面化されたイメージへと移行していきます。小さな遭遇が記憶の中へと柔らかく溶け込み、変容した抽象性は知覚そのものに焦点を当てています。それぞれの作品は日々のささやかな体験を捉えています。作家に、あるいは鑑賞者に、微かな波紋を残す儚い瞬間たち。それらはふと道で拾い上げた、水切りの小石のようです。
Exhibition Period
Venue
17 Goulston Street
London E1 7TP
open
Thursday – Saturday 12–6pm
